欧州連合(EU)の炭素国境調整メカニズム(CBAM)の影響を受けるベトナムの輸出品目の中で、鉄鋼は輸出額の大半を占めています。一部の統計では、ベトナムのCBAM対象品目の価値の約96%が鉄鋼分野によるものとされており、EUが貿易と炭素排出削減要件をより強く結び付ける中で、同産業が大きな対応圧力に直面していることを示しています。


鉄鋼がベトナムのCBAM対象品目価値の大半を占める

EUは、ベトナムの鉄鋼産業にとって重要な輸出市場の一つです。ベトナム鉄鋼協会が引用したデータによると、2023年のEU向け鉄鋼輸出量は約320万トン、輸出額は約25億米ドルに達し、2022年の約2倍となりました。2024年1〜4月には、EU向け輸出量が約147万トン、輸出額が10億米ドルを超えました。

輸出規模の大きさから、EUによるCBAM導入において鉄鋼産業は特に注目されています。CBAMは輸出量だけでなく、製造過程で製品に内包される炭素排出量の把握も求めます。

このため、EU市場へのアクセスを維持したい鉄鋼企業は、品質や原産地要件を満たすだけでなく、排出量を追跡・算定し、信頼できるデータとして提示する能力も必要になります。


CBAMは2026年から本格適用

CBAMは、2023年10月から2025年末までの移行期間を経て、2026年1月1日から本格運用段階に入りました。現在の対象品目は、セメント、鉄鋼、アルミニウム、肥料、電力、水素の6分野です。

CBAMの目的は、EU域内に輸入される製品に炭素コストを反映させ、企業がより排出規制の緩い地域へ生産を移転する「カーボンリーケージ」のリスクを抑えることにあります。CBAM対象となる輸入者は、製品に内包される排出量を申告し、規則に基づいてCBAM証書を購入・提出する義務を負います。

CBAM本格運用初期の2026年1月1日から6日までの期間では、申告されたCBAM対象品目の総量の98%を鉄鋼が占めました。欧州委員会は、これは導入初期の暫定的な数値であると説明していますが、鉄鋼分野がCBAMにおいて非常に大きな位置を占めていることを示しています。


圧力は炭素コストだけではない

ベトナム企業にとって重要な課題の一つは、検証可能な排出量データ管理システムを構築することです。

本格運用段階では、品目ごとに排出量算定の対象範囲が異なります。鉄鋼、アルミニウム、水素については、現行のCBAMでは主に直接排出が対象となる一方、セメントと肥料については直接排出と間接排出の双方を報告する必要があります。

欧州委員会は2026年8月、鉄鋼産業向けを含む分野別ガイダンスを追加で公表し、EU向け輸出品の排出量を監視・算定する仕組みの構築を支援しています。

鉄鋼業界にとって、排出量管理は今後の競争力を左右する新たな要素となる可能性があります。企業は生産量やコストだけでなく、製品1トン当たりの排出量と、その数値をどのようなデータで証明できるかを把握する必要があります。


鉄鋼が中心だが、対象はそれだけではない

過去の統計では、鉄鋼がベトナムのCBAM対象品目価値の非常に大きな割合を占めていますが、96%という数字が毎年固定されるわけではありません。輸出額や品目構成は時期によって変化する可能性があります。

セメント、アルミニウム、肥料などの品目もCBAMの対象であり、EU向け輸出時にはそれぞれ該当する要件を満たす必要があります。

ベトナムにとって、CBAMは鉄鋼業界だけの新たな課題ではありません。排出量データ、温室効果ガスインベントリ、排出削減能力が、国際貿易においてますます重要な要素になっていることを示しています。

CBAMが本格運用に入った現在、排出量の自主的な把握とエネルギー効率の改善は、国際貿易とより密接に結び付く炭素要件への対応力を高めるうえで重要になります。